明治時代に始まった我が国の水道事業は、全国津々浦々まで水道管が敷設され、2017年度の国内の水道管普及率は97.3%に達しています。
ところが、水道事業は大きな問題を抱え転機を迎えていると言われています。
収支の悪化と施設の老朽化
水道事業は独立採算性が基本になっています。
水道の利用者が減少すれば、経営が悪化していきます。
といって、料金の値上げは住民の賛同をなかなか得られません。
現在の水道事業は、人口減少と節水型社会の到来、大口利用者である大手病院や商業施設が地下水を利用した専用水道への切り替えで利用状況が少なくなっています。
水道事業者は近隣との広域化や事業の一部民営化など経営環境の改善を図ろうとしていますが、順調に進んでいる状況ではありません。
水道事業の実態
インフラの老朽化が問題になって切迫度の大きいものの一つが水道です。
飲み水は人々の暮らしと生存を支える基礎ですが、水道の未来は盤石とはいえません。
漏水事故は、小規模なものを含めると年間2万件以上も発生していて、日常茶飯事という状況です。
他のインフラと水道の大きな違いは、運営する事業主体が零細という特徴があります。
巨額の先行投資を要するインフラ事業は、通信や電気など少数の巨大企業が経営するパターンが通例です。
水道事業は、市町村が基本単位で、全体の7割は給水人口が5万人未満の小規模事業です。
水道事業の問題点と今後のあり方
水道事業には、下記のような構造的な問題があると言われています。
●人口減少による慢性的な需要減
●高度成長時代に敷設された水道管がそろそろ耐用年数を迎え、かかる費用は増大になることが予想される
このような問題点から、水道が現在の独立採算制を維持しようとすれば、長期に渡って料金の値上げが避けられないということです。
政策投資銀行の試算では、何もしないと1㎥あたり全国平均で172円の水道料金が2046年度には、281円と6割以上の値上げになるということです。
これは、全国平均ですから住宅がまばらな農村部ではもっと急激な値上げが予想されます。
こうした問題点の解決策の一つとして、注目されているのが官民連携のひとつである「荒尾モデル」です。
荒尾市は、熊本県の北部に位置しており、人口5万人強の地方都市です。
管路の維持管理や必要な補修工事、メーターの検針、料金徴収などを民間企業に包括委託し、その対価として5年間で約31億円を支払いました。
民間委託で、長期に渡る管路の改修計画をしっかり立ててもらうことを期待しています。
料金滞納者への支払催促が厳格になったことで、長期滞納者が大幅に減ったり、市民の評判も良くなったということです。
川崎市や神戸市では、米国で開発されたAI技術を試験導入し、土壌のpH値や海からの距離、道路の交通量など約1千以上もある変数をAIで処理して、各水道管の5年後の破損確率を導き出し、どの管から先に取り換えるか優先順位を付け更新投資の効率を図るということです。
官民連携の取組みは、始まったばかりで成果は今後に期待されるところです。
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