国土交通省は、2020年10月に不動産売買時の「重要事項説明」について、テレビ電話など非対面でも可能とする方針を決めました。
「IT重説」と言われる手法ですが、令和3年3月30日より売買の重説も含めた運用が始まりました。
新型コロナの感染拡大の影響を受け、不動産業界内外で非対面ニーズが高まっていることや、デジタル庁の設置からも当然の流れなのかもしれません。
重要事項説明とは
「重要事項説明」とは、「宅地建物取引業法第35条に基づき宅地建物取引士が行う重要事項説明」をいっています。
内容は、宅地建物の取引における契約上重要な事項を説明することになります。
説明の際は、説明の内容を記載した書面に宅地建物取引士が記名、押印したものを「重要事項説明書」として交付して行います。
説明を要する事項は、売買か賃貸かなどの取引内容に応じて異なりますが、大きく分けて、次の4分野になります。
- 取引対象不動産の権利関係
- 取引対象不動産に係る法令上の制限
- 取引対象不動産の状態やその見込み
- 契約の条件に関する事項 とされています。
重要事項説明は、契約に至る前に不動産の特性や取引の形態に起因して取引当事者に不利益が発生することを防ぐために実施されるものです。
IT重説になると
IT重説は、パソコンやテレビなどの端末を利用して、対面時と同様に説明や質疑応答が行える双方向性のある環境が必要となります。
国土交通省が挙げているIT重説のメリットは大きく4つあります。
1.遠隔地の顧客の移動や費用等の負担軽減
2.重説実施の日程調整の幅の拡大
3.顧客がリラックスした環境下での重説実施
4.来店困難な場合でも本人への説明が可能
IT重説が導入されることで、地方から上京する大学生の入学前部屋探しなど、契約のために日を改めて不動産業者に足を運ぶ必要がなくなります。
IT重説の課題
賃貸借契約におけるIT重説は、2017年10月1日から運用が始まっていますが、売買取引におけるIT重説も今回含めたことになります。
賃貸契約時における重要事項説明は1時間程度で終わるのに対し、売買契約時の重要事項説明は長ければ2~3時間かかることも普通です。
売買を含めたIT重説を実施する上で、いくつかの問題点が指摘されています。
ひとつは、高品質の画質・音声の回線が必要になってきて、宅地建物取引士と契約者がお互いの姿と声をインターネット通信を通じて認識できる環境が不可欠になってきます。
また、IT重説のさなかで取り交わされる会話を漏れないような環境作りも必要になってきそうです。
インターネットのテレビ通話を利用して会話するため、宅地建物取引士からの説明や契約者が回答する個人情報が含まれる声を周囲に漏れないようにしなければなりません。。
さらに、「契約書」「重要事項説明書」といった書類を、どうするのかという問題もあります。
重要事項説明を聞いた後は、これらの書類に署名押印しますが、この手続きをどのようにするのかといった課題もあります。
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