不動産の取引に関して、よくあるトラブル事例から学べる事は多いです。
建物の瑕疵に関する問題
中古住宅の傷は、瑕疵に該当?
築25年の中古住宅を、不動産業者から直接購入しました。
重要事項説明では、構造、配管、設備等に相当の経年劣化があることの説明は受け、瑕疵担保責任の期間は、2年とする特約で契約しました。
生活を始めて、内覧時に気付かなった傷がみつかりました。
この傷は、瑕疵として業者に修繕の依頼を行うことができるのでしょうか?
瑕疵とは
瑕疵とは、「売買の目的物が通常有すべき品質、性能を欠いていること」を意味します。
上記のような場合、この傷が築25年を経過する中古の建物として、通常有すべき品質、性能を有しているかどうか、また、売主と買主の間でどのような性質を有することが予定されていたかどうか等から、物件の瑕疵に当たるか否かが判断されることになります。
判例では
東京地裁の平成28年7月14日の判例では、『築23年の中古オフィスビルの売買で、雨漏り、外壁の爆裂、排水管の漏水、手すりの取り付け部分の緩み等について、中古ビルにおいて通常生じうる経年劣化である』と判断されています。
この裁判では、上記の理由で買主の請求が棄却されています。
教訓
判例から判断すると、新たに気が付いた傷があることをもって、直ちに瑕疵に該当するとは限りません。
実際問題として、中古物件の場合、瑕疵に該当する傷なのか、経年劣化に該当する傷なのか不明瞭な場合が多々あると思われます。
事前の説明をしっかり受けることと、経年劣化による傷を含めて、内覧時に良く確認しておくことが重要になってきます。
物件の越境に関する問題
中古住宅の越境問題はどうなる?
約3年前に購入した中古住宅の隣家から、『あなたの建物の庇の一部が越境しているので直して欲しい』と言われました。
買うときには、そのような説明は受けていません。
仲介の不動産業者にどう対応したらよいか相談しました。
越境はどのように判断される
建物の越境は、原則として物件の瑕疵に相当します。
売主が、故意または過失によりその事実を告知していなかった場合、瑕疵担保責任または不法行為に基づき責任が生じます。
また、仲介業者については、越境の事実を知っていて告知しなかった場合、また、越境の事実を看過したことについて注意義務違反があった場合、さらに、買主から特別に越境についての調査を依頼されていた場合等、責任が生じる可能性があります。
判例では
東京地裁の平成23年9月12日の判例では、マンションの4階部分の外階段が越境していたケースにおいて、
〇売買当時に売主が越境の事実を把握しておらず、仲介業者にも説明していなかった。
〇隣地との境界には境界杭があって、争いがなかった
〇目視で越境を見つけることが困難であった
〇売買関係者のうち一人も越境について言及しなかった 等
の事情があって、このことから「通常の調査において、越境の事実を見つけることは困難であったと認められる」として、仲介業者の注意義務違反は否定されました。
教訓
越境については、慎重な調査が求められます。
仲介業者が入っている場合は、確認を求めることが必要です。
売買契約前に越境が判明した場合は、仲介業者に「建物の建て直しに合わせて修正する」等の合意書を隣地住人との間で作成してもらい、それを引き継ぐことで解決を図ることが考えられます。
また、売買契約が終わっている場合は、仲介業者に調査義務違反があると考えられる場合は、隣地住人と買主との間で新たな合意を結べるように調整してもらったり、和解金を払って解決していくことが考えられます。
ということで、越境関係は売買の時慎重に対応するようにしたいものです。
入居者の居室への立入問題
警察等からの要請による居室への立ち入り
警察等から、連絡の取れない入居者の安否確認を求められ、大家や管理会社が居室の鍵を開けた場合、民事上や刑事上の問題はないのだろうか?
基本的な考え方
大家、または管理業者は、火災などの緊急時を除いて、入居者の許可なく居室へ立ち入ることは原則として出来ません。
しかし、安否確認など社会的相当性が認められる場合は、違法性が阻却されることがあります。
例えば、入居者の親族や同僚から安否確認のために、開錠を求められた場合はどうでしょうか。
この場合でも、鍵を開けたことを責められる恐れがあります。
やはり、警察に立ち合いを求めた方がベターだと言えます。
こうすることによって、完全に違法性が阻却されるわけではありませんが、責任追及をされる可能性は低くなっていきます。
教訓
本件のように公的機関またはそれに類する機関からの要請の場合でも、一般的に開錠に応じる義務まではないと考えられています。
しかし、入居者が病気で動けない場合やお亡くなりになっている可能性もありますから、実務的には協力した方が良いと考えられます。
私設水道管の説明の内容
私設水道管があった
土地の売買契約の重要事項説明における上水道欄で、「接面道路配管有り」、「敷地内配管有り」。「私設管なし」と説明を受け購入しました。
その後、引き渡しを受けた後に詳細を調査したところ、水道配管については30m以上離れた公共の本管から、個人の管で引き込んでいることが判明しました。
さらに、この個人の管が相当に経年劣化していることがわかりました。
基本的な考え方
私設管の有無は、重要事項説明で説明が必要な項目です。
敷地の前面に公共の水道管が来ておらず、遠方から公共管以外の配管で引き込んで利用しているかどうかを説明する必要があります。
この引き込み配管は、自分、他人を問いません。
私設管があると、管理の問題や、破損した場合の修理費が発生する可能性があります。
他人の私設管を利用する場合は、トラブルに発展することもあります。
よって、仲介業者は重要事項説明で必ず私設管の説明をする必要があります。
買主の対応と結果
買主は、将来的に工事が必要になった場合、相当な費用が掛かることが予想されることから、苦情相談を行い、私設管のやり替え工事費用、さらに慰謝料を求めました。
結果は、当事者間で合意に至り、仲介業者が私設管のやり替え工事を行うことになりました。
ただ、慰謝料については合意できずに、最終的には支払われなかったということです。
教訓
「重要事項説明」は、言葉のとおり、重要な事項の説明です。
しかも、その性質から、売買契約を結ぶ前に実施することが求められています。
項目も多岐にわたり、専門的な内容も多いことから受け身の姿勢になりがちです。
疑問に感じたら、積極的に質問して納得して購入するようにしたいものです。
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