令和2年4月1日より施行される民法改正では,賃貸借契約に関連するものとして,いくつかの点で見直しがされています。
そのひとつとして、「賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化」が実施されました。
賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化
改正前の民法
(例)賃借人は、借りていた家を退去することになりましたが、家主から日焼けしたクロスの張替費用を負担するように求められました。
賃借人としては、経年変化ともいうべきクロスの張替費用まで負担することには納得できませんでした。
賃貸借契約が終了した場合には、賃借人は、賃借物を原状に戻して賃貸人に返還しなければならないと解釈されています。
また、この原状回復義務の範囲について、一般には、通常損耗(賃借物の通常の使用収益によって生じた損耗)及び経年変化はその対象に含まれていないと解釈されています。
しかし、これらのルールは改正前の民法の文言上は明確ではありませんでした。
改正後の民法
改正後の民法では、賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状回復義務を負うこととしました。
しかし,通常損耗や経年変化については原状回復義務を負わないことを明記にしました。
(通常損耗・経年変化に当たる例)
●テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
●地震で破損したガラス
●鍵の取替え(破損,鍵紛失のない場合) 等
(通常損耗・経年変化に当たらない例)
●日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備等の毀損
●タバコのヤニ・臭い
●飼育ペットによる柱等のキズ・臭い 等
不動産賃貸借契約条項(参考)
明渡し時の原状回復に関する条項については、下記条文を参考にしてください。
(明渡し時の原状回復)
第〇条 本物件の明渡し時において、借主(以下、乙という)は、通常の使用に伴い生じた本物件の損耗及び本物件の経年劣化を除き、本物件を原状回復しなければならない。ただし、自然災害等乙の責めに帰することができない事由により生じたものについては、原状回復を要しない。
2 貸主(以下、甲という)及び乙は、本契約時において、本契約に係る明渡し時の原状回復の条件については別表の記載によることを確認した。
3 甲及び乙は、本物件の明渡し時において、別表の規定に基づいて乙が行う原状回復の内容及び方法について協議するものとする。ただし、原状回復の方法は、別表に特段の定めがない限り、甲が工事の手配等を行うものとし、乙は、自らの負担部分に係る費用を甲に対し支払うものとする。
(別表)
【原状回復の条件について】
本物件の原状回復条件は、下記の「例外としての特約」による以外は、賃貸住宅の原状回復に関する費用負担の一般原則の考え方によります。すなわち、
・借主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用方法を超えるような使用による損耗等については、借主が負担すべき費用となる。なお、震災等の不可抗力による損耗、上階の居住者など借主と無関係な第三者がもたらした損耗等については、借主が負担すべきものではない。
・建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)及び借主の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)については、貸主が負担すべき費用となる。
ものとします。
その具体的内容は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」において定められた別表1及び別表2のとおりですが、その概要は、下記のとおりです。
以下、省略。
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