訴訟提起時に建築後39年のマンションでは、当初の管理規約には住居専用規定はありませんでした。
その後、管理規約を改正し1階部分の一部を除いて住居専用規定を設けました。
税理士は、5階の専有部分を購入後、住居として使用していましたが、その後税理士事務所の所在地をこの専有部分に変更しました。
管理組合の役員らは、この行為が共同の利益に反するとして使用禁止の提訴をしました。
マンションの現況と1審の審査
1審では、本件マンションの2階以上の部分で、以前に皮膚科医院や歯科医院があったこと、現在もカラオケ教室が営まれている等、住居以外に使用されている部分があって、住居専用規定が厳格に適用されてきたとは言えないとしました。
さらに、税理士事務所があるために日常的に騒音等の多大な被害が生じているとは言えないとしました。
以上の判断から、共同の利益に反しているとは言えないとして、管理組合の請求を棄却しました。
管理組合は、不服として控訴した事案です。
東京高裁の判断と判決
問題点1 税理士事務所の使用は管理規約の住居専用規定に違反するか。
問題点2 住居専用規定は規範性がないか。
問題点3 税理士事務所としての使用は共同の利益に反しないか。
東京高裁は、原判決を取消し、管理組合の請求を認めて、税理士事務所としての使用を禁止しました。
「問題点1」は、管理規約を改正した後に、税理士事務所を開所しており、管理規約の住居専用規定に違反すると判断しました。
「問題点2」は、2階以上の専有部分で皮膚科医院、歯科医院やカラオケ教室等の使用があったが、住居専用規定が設けられて以降、住居専用規定に反する使用方法がある場合はそれを改めるように努め、順次住居専用規定になるように使用方法が変化してきている事実があって、住居専用規定は規範性を欠如しているとは言えないと判断しました。
「問題点3」は、住居専用規定は、マンションの2階以上を住居としての環境を確保するための規定であり、税理士事務所としての使用は共同の利益に反すると判断しました。
マンションの管理規約がいつ改正されたのか、その効力を発揮するために管理組合がどういった努力をしてきたか、しているかが大きな影響を持つようになります。
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