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裁判例による入居期間が耐用年数を超えた賃貸物件での原状回復費用の負担割合

賃貸物件の原状回復 不動産の情報

借主は、平成19年12月に貸主からアパートの1室を借りて、8年後の平成28年1月に退去しました。

賃料は、月105,000円で、敷金は1ヶ月の105,000円でした。

貸主は、原状回復費用から敷金を引いた金額109,015円を請求したところ、借主は資金から控除できるのは、6,902円のみとして返還を求めて提訴しました。

借主の主張

1.ハウスクリーニング費用は、通常、家主が負担すべきであり、契約に借主が負担する旨の特約もない。

2.国土交通省の「原状回復ガイドライン」によれば、壁クロスの耐用年数は6年であり、8年間居住しているので明け渡し時点での借主負担はない。

3.貸主が主張する各種キズ破れや雑誌の張り付きは存在しないか、通常損耗に相当する。

貸主の主張

1.ハウスクリーニング費用48,000円

借主はかなり乱暴に使用しており、原状回復に20万円を要した。その1/4程度は負担すべきである。

2.壁クロス張り替え費用34,637円

居室、トイレに多数のキズ破れ・汚れがあり、少なくとも張り替え費用の半額は負担すべきである。

3.床クッション張り替え費用35,000円

長年放置されて剝がすのが困難な雑誌の張り付き等が多数あり、張り替え費用の1/10は負担すべきである。

4.その他54,600円

流し台引き出し、浴室ドアの破損による交換代の一部、エアコン残置物撤去費用等。

東京地裁判決の要旨

判決の要旨

借主には、敷金額以上の原状回復費用負担義務があるとして、借主の敷金返還請求を棄却しました。

  • 証拠写真によれば、室内は著しく汚れが目立ち、借主が賃借人の善管注意義務に反して使用し、その状況のまま物件を明け渡したと認められる。

そのため、ハウスクリーニングを実施せざるを得ず、7万円程度かかったうちから、ワックス仕上げ費用などを除く48,000円相当である。

  • 借主は、壁クロスの耐用年数は6年であり、居住期間がそれを超えているから負担ゼロと主張するが、原状回復ガイドラインには、「経過年数を超えた設備等であっても、賃借人は善良な管理者として注意を払って使用する義務を負っていることはいうまでもなく、そのため、経過年数を超えた設備等であっても、修繕等の工事に伴う負担が必要となることがあり得る」としている。

台所の壁クロスの張り替えには少なくとも17,000円の費用がかかり、その半額を原状回復義務の不履行に基づく費用と認めることは相当である。

  • 床の雑誌の張り付きや流し台引き出し、浴室ドアの破損も賃借人の善管注意義務違反が認められ、通常損耗であったという借主の主張は採用できない。

耐用年数を経過しても、賃借人が善管注意義務を尽くしていれば交換の必要はなかったものであり、これらに対する総費用額96,000円のうち、52,000円を原状回復義務の不履行と認めることは相当である。

  • 以上によれば、借主は貸主に対し、原状回復義務の不履行に基づく原状回復費用として、少なくとも117,180円の支払義務を負い、その他の原状回復費用を検討するまでもなく、賃貸人に敷金返還義務はない。

 

賃借人は、耐用年数を超える長い年月を賃貸していても、善良な管理者としての注意を払って使用する義務を負っていることを、改めて認識したいものです。

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