アスベストは、石綿のことですが、耐久力があり、溶融点が高く、熱絶縁性や耐薬品性も大きいなど、安価で優れた性質を持っています。
このため、建築素材としても、断熱材、保温材、耐火材など、さまざまな用途に使用されてきました。
しかし、石綿の繊維を肺に吸入すると、肺がんや中皮腫の原因となることがわかり、1975年には吹き付け使用が禁止されました。
2006年に輸入と使用が禁止されましたが、それまでは使われ続け、国土交通省の推計によると、アスベストを使った民間建築物は国内に約280万棟もあり、解体は2028年頃がピークになると言われています。
アスベスト関連死
厚生労働省の調査によると、中皮腫による死者は2017年で1,555人、この人数は増え続けているということです。
アスベストが原因の肺がん死者の統計はないということですが、中皮腫の倍以上、少なくとも年3,000人はいるとされ、合計で約4,500人になります。
アスベスト関連疾患は、かつてはアスベストを扱う仕事に従事した人の職業病とされてきました。
しかし、工場周辺の一般市民や建設作業でアスベストを吸い込んだ人たちが各地で裁判所に提訴し、国の責任を認める判決が続いています。
さらに、近年はアスベストに接する環境にいないにも関わらず発症する患者の方も少なくありません。
国は2006年、労災認定を受けられない人たちを対象に、月約10万円の療養手当などを支給する「石綿健康被害救済法」を施行し、これまで約1万4千人の人たちが認められています。
ただ、治療が難しいと言われる中皮腫の患者の人たちは、仕事を続けることも困難で月10万円の給付では生活も困難と課題はつきません。
宅地建物取引業法の改正
2006年3月13日に宅地建物取引業法施行規則の一部が改正され、「建物における石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容」が重要事項説明事項に追加されることになりました。
アスベストの使用の有無の調査結果が保存されている場合は、「その内容」を明記することになりますが、具体的には、「調査の実施機関」「調査の範囲」「調査の年月日」「石綿(アスベスト)の使用の有無」「石綿(アスベスト)の使用箇所」について記述し説明することになります。
アスベストの使用の有無の調査結果が保存されていない場合は、調査義務を果たしたことを明確にする必要から、「売主及び所有者に当該調査記録の有無を照会」、マンションの場合は「管理組合及び管理会社」、「施工会社」等に問合せ、調査結果が存在しない、または存在が判明しない場合は、その照会経緯と結果を記述し説明することになります。
なお、アスベストに関して説明すべき事項は、『石綿(アスベスト)の使用の有無の調査の実施自体』を宅建業者に義務付けているわけではありません。
宅建業者に課せられている義務は、調査記録結果の有無を当該物件関係者に照会し、その結果を明記して説明することです。
国土交通省も「アスベスト対策Q&A」を設けて不安に対応しています。
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