認知症の高齢者が増える一方で、判断能力の衰えた高齢者らを支えるべき「成年後見制度」の利用が進んでいないということです。
国は、財産管理中心のこれまでの運用から、本人が希望する生活支援に重点を移していく意向のようです。
しかし、現場の自治体の体制整備が追い付いていないのが現状のようです。
成年後見制度の内容
成年後見制度では、後見人は財産管理の他、介護サービスの利用を契約したり、悪徳商法の売買契約を取り消したりできます。
ただ、利用は低調で、2018年末の利用者は約21万8千人です。
増えてはいますが、推計500万人以上という認知症高齢者数に比べて非常に少ない数で、制度の厳格さなどが原因と考えられています。
弁護士や司法書士などの専門職の方が法定後見人の8割を占め、しかも、「本人の様子を見ない、財産管理が中心、報酬は高い」といった不満が聞かれています。
最高裁は今年1月、「親族を後見人とすることが望ましい」などとする方針を示し、専門職の報酬も業務内容に応じたものに改めるように通知しました。
自治体の体制整備
国は2017年の「成年後見制度利用促進基本計画」で、本人の生活への配慮を重視する方針を明確にしました。
この中で、鍵を握ったのが、自治体などが中心となって整備する「中核機関」です。
家裁や弁護士などの専門家、医療・福祉団体などと連携して、制度の利用相談から適切な後見人のマッチング、後見人への支援などを総合的に実施する体制です。
しかし、昨年10月時点で整備済みだった市町村は4.5%の79自治体にすぎませんでした。
自治体からは、「予算や人手が不足」「どこまで整備を求められているかわからない」といった戸惑いの声が聞かれています。
ただ、国の有識者会議では、全自治体が2021年度末までに「中核機関」を整備するとの目標を確認しています。
「市民後見人」とは
こんな状況の中、「市民後見人」と呼ばれる人が注目されています。
この方たちの育成は、自治体などが定めた研修などを行う制度です。
ある市民後見人になった方は、市の社会福祉協議会と協力して、認知症の方の身の回りの世話を実施しました。
市の社会福祉協議会は、「市民後見人」の方が本人に近い目線で必要なことをサポートしてくれているおかげで、在宅生活を送られていると高評価をしています。
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