ある民間の調査会社によると、認知症の方が所有する住宅が2040年には280万戸に達するという推計を出してい
ます。
認知症になって判断能力が低下してくると、住宅の管理や売却が難しくなってきます。
結局、放置されてしまうことになり、空き家になっていくという行方にもなってしまいかねません。
今後の認知症と住宅
第一生命経済研究所が、国の住宅に関する全国調査や認知症の年齢別の将来見通しなどを基に試算した結果です
と、認知症の方が持つ住宅は2021年時点で221万戸に上ります。
国内の住宅の30戸に1戸を占めるという驚くべき数字です。
65歳以上の高齢者人口がピークを迎えると言われる2040年には280万戸に達すると予想されています。
売却には本人の売却意思が必要
住宅を売却したくても、本人の売却意思が確認できないケースが認知症の方の増加とともに増えている。
認知症になった親を施設に入居させるため、親の家を売却して施設の入居費などに当てたいと思っても難しい状
況が見られている。
売買契約は、自宅を所有する親自身が売却の意思を示さなければ不可能です。民法では、契約の内容を理解でき
ない状態で交した契約は無効とされています。
認知症の方の金融資産を巡っては、全国銀行協会が「医療費など本人の利益に合致することが明らかな場合」な
どに親族などが代理で引き出すことを認める考え方を示しています。
しかし、住宅は預金のように簡単に分割できず、柔軟な対応がしにくいという側面があります。
成年後見制度の活用
判断能力が低下した後、住宅の売却などを可能にする仕組みとして、成年後見制度があります。
しかし、手続きの複雑さや費用負担など使い勝手の悪さが指摘されています。
認知症の方が600万人と推計される中、制度の利用者は2020年末時点で23万人にとどまっている状況です。
空き家の増加の懸念
本人が介護施設に入所した後、住む人がおらず、売却も賃貸もできなければ「空き家」になってしまします。
事前の対策としては、どの資産を誰に任せるかを契約で決めておく家族信託などがありますが、本人が元気なう
ちの家族と相談して準備しておく必要があります。
専門家は、不動産取引は複雑なので預金以上に対策が必要で、取引の指針作りなどの対策が急務だと指摘してい
ます。
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