4年以上にわたり理事長を務めた人が、その職にある時管理組合の預金を引き出すなどして管理費を横領しました。
管理組合の口座は3つあり、一つは理事長が通帳・印鑑とも保管、残りの2つは印鑑を理事長、通帳を管理会社が保管していました。
この理事長は、自分が保管している口座から勝手に預金を引き出したり、残りの2つの口座からも通帳紛失届により通帳の再発行を受け、勝手に口座から預金を引き出していました。
管理会社は、預かっている通帳から管理費を引き出そうとして通帳が使えないことからおかしいと気づき、理事長に問い合わせしました。
そのようなことが何回か続き、管理会社は印鑑を理事長から預かり通帳の再発行が出来ないように対応しました。
横領したお金については、理事長からマンションを売却して返済するので待って欲しいと言われ期日まで待ったが返済されませんでした。
管理会社は、理事長の横領行為を理事会に報告しましたが、管理組合は管理会社の善管注意義務違反があるとして損害賠償を請求しました。
何が問題だったか
- 管理会社は、管理規約などに基づき管理組合の通帳を保管する義務はあるのか
- 管理会社に善管注意義務はあるのか
- 管理組合に責任があるのか
裁判所の判断
結論(東京地方裁判所)
管理会社に善管注意義務違反があるが、管理組合にも過失があるとして、管理組合の請求を一部認めて、管理会社に支払いを命じました。(管理組合の過失6割)
1.管理会社は、管理規約によって管理費等の収納代行業務と委託等の支払代行業務を受託している。
しかし、管理費等の保管、運用業務は管理規約により管理組合の会計担当理事の職務になっている。
現在は、マンション管理の適正化法が成立しているが、管理契約は同法成立以前であり、同法の収納代行の定義は採用されない。
2.管理会社は、理事長が通帳の再発行を最初に知った時点から、善管注意義務に基づき通帳が再発行されないように配慮する義務を負っている。
さらに、定期的に残高を確認し、紛失届が出されていないか確認すべき義務も負っている。
管理会社が理事長による横領を最初に知った後、すみやかに管理組合の理事に報告しなかったことも善管注意義務違反になる。
3.管理規約では、会計担当理事の義務が果たされていないこと、さらに監事による監査が全くなされていなかったことが、今回の長期、多数回の横領を防止できなかったことの要因のひとつである。
よって、民法418条に基づき、損害の公平な分担という観点から、管理会社は損害額の4割を負担、管理組合がその6割を負担すべきである。
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