2019年、台風19号による大雨で埼玉県川越市の特別養護老人ホームの1階部分が水没しました。
約100人の入所者・利用者と職員24人が一時孤立状態になり、消防のボートで救出されましたが、幸いにも死者はでませんでした。
施設は、堤防が決壊した越辺川の近くで、市のハザードマップの浸水想定区域にありました。
施設はどうして浸水想定区域に建ったのか
施設によると、古い話なので詳しい経緯は分からないということですが、施設が開所する当時はまだハザードマップが作成されていなかったということです。
今回の被害を受け、施設は2022年春に浸水想定区域外に移転するということです。
地球温暖化の影響か、最近は自然の猛威がとてつもない状況ですから賢明な対処と言えそうです。
もともと、社会福祉法人は財政基盤が弱く、安い土地に施設を建てざるを得ない状況があるということです。
全国の特別養護老人ホームの3割が浸水の危険があるエリアに建っているということです。
行政の対応
特別養護老人ホームは、社会福祉法人や自治体が運営する公的な介護施設です。
危険区域への設置を制限することや、行政が土地取得に補助金を投入するなどの対処が望まれるところです。
地価が安い場所を選ぼうとすると、どうしても川の近くで災害の恐れが高いエリアに限られる傾向があります。
特別養護老人ホームは、民間の老人ホームより費用が安く抑えられているため人気が高く、入所待ちの人も多い状況です。
危険区域に建つ特別養護老人ホームは、緊急に何らかの対処が必要といえます。
特別養護老人ホームの現状
厚生労働省によると、特別養護老人ホームは2019年10月現在で全国に10,502施設あり、入所者は619,600人に上っています。
水害リスクのある施設が少なくないことについて、専門家は2000年にスタートした介護保険制度が背景にあり、介護を支える主体を社会全体で図ろうとしたことがあると指摘しています。
施設の立地については規制がないため、土地が安くて広い敷地が確保できる場所に多くの施設が建てられたということです。
例えば、施設を住宅地に建てようとすると、迷惑施設として反対運動が起きた事例もあるということです。
国としては、都市計画法を改正して、2022年から水害リスクが高い場所での開発を抑制していく方向です。
高齢化社会の到来を迎え、社会全体でどうすることが良いのか議論すべきです。
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