不動産の権利登記は、相続などで所有者が変わっても名義変更の義務はありません。
自治体が空き地や空き家の不動産登記を調べても、真の所有者がわからないケースが多くなっています。
2011年の「東日本大震災」の被災地では、所有者不明の土地が多くて自治体による用地買収の障害になりました。
地価が下落傾向にあり、さらに人口減少の進展に伴って、ますますこの問題が深刻化しそうです。
所有者不明土地とは
所有者不明土地とは、登記簿上の所有者が不明だったり、相続人が多数いてその内の1人と連絡が取れないような土地をいいます。
平成28年度の地籍調査では、20.1%もの面積がこれに当たり九州全土より広いという驚くべき数字です。
しかも増え続けている状況です。
土地所有者の探索は、公的書類等による調査や聞き取り調査によりますが、所有者が判明しなかったり、判明しても所在が不明の場合が少なくありません。
所有者不明土地の利用を促進する特別措置法の成立
上記の特籍法が2018年の6月6日に成立しました。
所有者不明の土地を活用することで地域活性化につながると期待されますが、この法律は応急措置としての側面が強い内容となっています。
全面施行は2019年夏頃の予定で、自治体やNPO法人などが利用することが期待されています。
特籍法の主な内容
●最長10年の利用権を設定し、公共性の高い事業に使えるようにする。
●所有者が現れた場合、利用権終了後に元に戻し返還する。
●公共事業に利用するために土地を収用する場合の手続きを簡素化する。
●行政機関が所有者を捜す際、固定資産税の課税台帳などの利用が可能にする。
所有者不明土地の「登記・管理適正化法」が成立
所有者不明の土地を一定の条件の下で、売却できるようにする法律が成立しました。
表題部所有者不明土地の登記・管理適正化法の主な内容
●法務局の登記官に調査権限を与える
●自治体OBや土地家屋調査士などを所有者等探索委員に任命
●所有者を特定できれば登記官が登記情報を更新
●特定できなければ裁判所の選任した管理者による売却が可能に
●売却した代金は供託。時効消滅後は国庫に
今回の法律で、条件を満たす所有者不明の土地は全国の1%程度にとどまるということです。
膨大な所有者不明土地問題の解消へのゴールはなお遠い道のりです。
今後は、「予備軍」の防止と、すでに存在している不明土地の管理・活用法が大きな柱だということです。
法制審議会では、相続登記の義務化や土地所有権の放棄などの議論を進めているということです。
イギリスでは、一定の手続きを経て自治体が利用権を収用できる権限の強い制度があるそうです。
空き家を放置する所有者への抑止力にもなっているそうで、日本でも検討されべきとの意見もあります。
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